リレー

ゆっくりじっくり絵本を楽しむ
( 茨城県・保育士・木下京子 )


 <絵本は、子どもの成長に切っても切れないたいせつなもの>、という考え方の下、「よみきかせ」を毎日の保育の中に取り入れています。

4 、 5 歳児クラスを受け持った最初の頃、前にも読んだ絵本を読み始めると、「そのはなし、知っている」「前にも見た」、という声が必ず飛び出してきました。絵本は繰り返し読んで(聴いて)楽しめるもの。どうしたら良いかと考え、絵本の楽しみ方を少しずつ変化させて伝えてみました。表紙と裏表紙をじっくり見せ、絵が繋がっているかいないか、などを話題にしてみました。子ども達は、ただそれだけのことでも目を輝かせ「おしまい」、と言いながら私が絵本を閉じるのを楽しみにするようになりました。

 そして、文字(言葉)のない「絵の空間」に注目することの楽しさを伝えると、『ホネホネさん』の絵本シリーズでは、 207 号室のニョロコさんの部屋がどこに書かれてあるかを探がしたり、クリスマスパーティに誘われた町のみんなが来ているかどうかを確かめたりします。『ぐりとぐら』 (なかがわりえことおおむらゆりこ/福音館書店 ) では、どっちが<ぐり>で、どちらが<ぐら>なのかを考え楽しむようになりました。

 発見する楽しさを覚えてからは、同じ本を繰り返し読んで欲しい、と言ってくるようになりました。また、他にも何か隠されているものがあるかも知れない、という好奇心で絵本に見入るようにもなりました。

さらに、私からはあえて伝えなかった裏表紙にあるメッセージも自分たちで気づき、『わたしはあみちゃん』 (『こどものとも』年中向き 2007 年 11 月号) を読んで何度目かの時に、裏表紙を見て「あっ、あみちゃん、ちゃんとこぐまを見に行けたんだね」、という言葉が飛び出しました。

 共に絵本を読み始めて 1 年。子ども達は、絵本の面白さ、奥深さに気づいてくれたようです。

絵本フォーラム59号(2008年07.10)より

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