こども歳時記

〜絵本フォーラム第58号(2008年05.10)より〜

さりげなく、自信を持たせる言葉のプレゼント 

 春を満喫されていますか? わが家にはピカピカの一年生がいます。嬉しい一方、この前まで最年長クラスで頼もしかった背中が、ランドセルにすっぽり隠れたとたん心もとなく見え、親としてはドキドキしながら後ろ姿を見送る日々でした。

 同じように4月に新生活をスタートされたご家庭は、連休でちょっと一息「ホッ」、そんな感じではないでしょうか?
  この時期、なかには環境の変化に圧倒されたり、自信をなくすお子さんもいるかもしれません…(それは、オトナも同じですよね)。そんな時は焦らず、さりげなく、自信を持たせる言葉のプレゼントがあれば、いつかはきっと……ね。

 『SOME DAY いつかはきっと…』(シャーロット・ゾロトフ/ぶん、アーノルド・ローベル/え、やがわすみこ/やく、ほるぷ出版)。 褒められたり頼りにされたいエレンのかわいい願いや夢が、ページをめくるたびに、小さな花束のように次々と現れる魅力的な絵本です。
  おにいちゃんが友達に「ぼくのいもうとです」って紹介してくれるシーンの、彼女のニンマリはにかんだ様子がたまりません。エレンや褒めた後のわが子の張り切りぶりを見ていて、親に褒められた記憶のない私も、実はどんなに褒められたかったか…と改めて気づかされました。
  作者・ゾロトフ氏の「良い絵本は、正直で、ひかえめで、直接的でなければなりません」との言葉も心に沁みました。


『 SOME DAY いつかはきっと…』
(ほるぷ出版)
親の元気は、子どもの笑顔につながります

『子どもを愛せなくなる母親の心がわかる本』
(講談社)
  

 「生まれてきてくれてありがとう!」と思ったその言葉に偽りはなく、でも理想の子育てには遠く、思うようにいかず落ち込んだりイライラすることも…。 “子育てはこうあるべきだ”的な助言も多いですが、親も子も家族も、性格や環境、能力などが違い、いつも素直に受け入れられるとは限りませんよね。

 タイトルは衝撃的でしたが、監修者にひかれて『子どもを愛せなくなる母親の心がわかる本』(監修/大日向雅美、講談社)を取寄せてみました。
  ストレスを自分で消化したり、周囲の力を借りながら子育てをする糸口、周りに求められる理解などが端的にまとめられていて、誰しもどこかで頷けそうな、実践的で目を通しやすい内容でした。
  私自身、育児スタート時に周りに知り合いはなく、夫も早朝から深夜まで不在の日々で「今日、日本語話したかな?」とか、虐待のニュースを見るたび「もしや一、二歩手前?」などとドキッとしたことや、仕事も育児もいっぱいいっぱいの時もありました。
  そんな時、周りのちょっとした言葉に救われたり、ファミリー・サポート事業でペアになった家庭のおかげで心身ともに復活したり……。今も凸凹子育ては続きます。

 親の元気は、子どもの笑顔につながります。しんどい時は、絵本はもちろん身近なモノや人、支援制度などの助けも借りながら、少しずつ自分の心に優しさを灯せたら、自然と子どもにも寄り添えるはず……。
  日々成長する子どもを見ながら、そんなことをお伝えしたくなった新緑の季節です。

(たかなし・かずこ) 


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