私の絵本体験記
「絵本フォーラム」56号(2008年01.10)より
「 わが家の ごくらく ごくらく 」
柳詰 良子 さん(福岡県福岡市 )

 「お母さ〜ん、ごくらくごくらくしようよ〜」と元気な声で娘のお風呂の準備がはじまります。どっぷりと肩まで湯船につかり、「あ〜きもちいいね〜。ごくらくごくらく」と言うのがいつもの口癖です。

 その始まりは、娘と書店へ立ち寄った時のこと。目にしたのは、優しそうなおじいさんと男の子が描かれた『おじいちゃんのごくらくごくらく』という絵本でした。「これに決めた!」とその絵本をしっかり握りしめ喜んで帰宅し、それから繰返し繰返し読んでいました。

 はじめは、「ごくらく」を“気持ちいいお風呂”と思っていた娘がある時私に「ごくらくって何?」と聞いてきました。すると私の横にいた中一の兄が「仏様のいる所だよ」とボソッと言うと「ふ〜ん。そっかー、仏様ねー」と首を傾げながらうなずいていました。

 絵本の内容は心がほんわか暖かくなるものですが、年の差のある兄妹の会話を聞きながら、なんだか家の中もほんわかもも色に染まった様な気がしました。

 私には長男高三、二男中一、長女小一と3人の子がいますが、思い起こしてみると長男が2才だった頃に『でんぐりでんぐり』という絵本を見て「お母さん、でんぐりしよう」と言って2人でよくでんぐり返しをしていた記憶があります。その時にふと、「子どもは、お話の中で体験して、また生活の中でも体験するんだな」と思いました。

 絵本のある生活は、家庭の中が常に「ごくらくごくらく」で心地よいものになること、それに小さな幸せを感じ今日も娘の声で「あ〜、あったか〜い!   ごくらくごくらく」の声がお風呂場に、そして家中に響いています。(やなづめ・よしこ)

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