私の絵本体験記

「絵本フォーラム」114号(2017年09.10)より

「絵本に取り憑かれて20年」

諸岡 弘 (京都府京都市)

 幼い時から、絵本が好きでも、本が好きでもなかった人間が、なぜか仕事を辞めた後諸岡 弘さん20年にわたって子どもたちに絵本を読む活動をしています。しかも、勤めていた会社を定年前の55歳で早期退職してまで……。仲間を募って読み聞かせの活動をする会(Jaracジャラック関西支部)を立ち上げ、関西の本屋さんで活動しています。

  「読み聞かせ」というからには、読み手と聞き手双方が同じ場所にいなければ成り立ちません。そう考えるとおじさん(もうおじいさんですが)が、たいして上手でもない読み方で読む絵本を、真剣な眼差しで聞き入ってくれる(と思っています)子どもたちの姿には感謝の他はありません。鈴は鳴らさなくては鈴ではない。本は読まれなくては本ではない。確か、中川正文先生がいつもおっしゃっていました。

 ガブリエル・バンサンの『アンジュール』(ブックローン出版、現在はBL出版)が私と絵本との出会いでした。それまで絵本を何となく、子ども・女のものと決めつけていました。それがこの絵本に出会って、そのデッサン力に驚愕したことを、今でもありありと覚えています。その芸術性の高さと奥の深さに……。

  絵本の絵を読み取る力は、子どもたちにかないませんが、絵本の面白さと楽しさは、ようやくなんとかわかる気がしています。子どもたちに絵本を読んでいる一方で、子どもたちと一緒に聞いている自分に気づくことがあります。そんな至福の時間を子どもたちと共有しています。

(もろおか・ひろし)


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