私の絵本体験記

「絵本フォーラム」110号(2017年01.10)より

「娘の記憶のなかに……」

羽石 憲子 (兵庫県宝塚市)

はねいし のりこ 娘の記憶のなかに 長女が1歳を過ぎた頃よく読んでいた絵本が、『くっついた』(三浦 太郎/作・絵、こぐま社)でした。娘をひざの上にのせて読んだ絵本の時間は、幸せなひとときでした。読み聞かせにとどまらず、「くっついたあそび」が我が家で始まりました。手と手がくっついたと言っては笑い、積み木がくっついたと言っては、きゃっきゃと笑顔になる娘を見ると、私も自然と笑顔。ほっぺとほっぺをくっつけたときのあのやわらかさ、心地よさは今でも絵本を見るたびに思い出します。

 やがて言葉が少しずつ出始めた頃、「った」と娘がよく口にするようになりました。最初は手と手を合わせて「った」だったので手遊びくらいに思っていたのです。でも良く見るといろんな物を合わせては「った」と言っていたので、「くっついた」と言っているのだと気づきました。しかも満面の笑みで。娘はしっかりと「くっついた」の意味を、体験を通して自分のものにしていたのです。そしてこの言葉は、たくさんの笑顔や温かな感触とともに娘の中に記憶されていくのだと思います。

 娘がいつか母となったとき、この絵本をプレゼントしようと心に決めています。娘はどんな思いでこの絵本を自分の子どもに読んであげるのだろうと思いをはせながら・・・・・・。
(はねいし・のりこ)


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