えほん育児日記

   
わたしの子育ては・・・


~絵本フォーラム第109号(2016年11.10)より~  第3回

 自分は、ダメな母親だと思っていた。だから、こんな母親に育てられて子どもが可愛そうだし、なんとかしなければいけないと思っていた。私の母は、自分のことよりも、子どもが優先という母だった。夜中にトイレに起きれば、「どうしたの?」と声をかけてくる、地震があれば、部屋にとんでくるという母だった。自分も、母親のようにならなければいけないと思っていた。でも、私は子どもより、自分が優先だった。夜中に子どもが「トイレに行く!」といっても眠くて起きられず、ちょうど、寝室の目の前がトイレだったので「ここから見えるから大丈夫」と言って、一人で行かせた。母親のようにできない自分にイライラしていた。子どもが言うことを聞かないと怒り、また怒ってしまったと落ち込み、思った通りにできないことにイライラし、また子どもに八つ当たりをしてしまう、という悪循環だった。だから育児書を読み漁り、よい母親になるにはどうしたらよいかを探し続けた。そして、その通りにできない自分に、やっぱりダメな母親だと、また落ち込む。

わたしの子育て そんな時、子育てのコツ、コミュニケーションのコツを教えてくれる、あるコミュニティに出会った。そこで学ぶことによって、子育ての悩みや本音を話せる仲間ができた。ママ友だちは、よいお母さんに見えていたので、ダメな母親である自分をさらけ出すことはできなかった。でも、ネットで、実際に会ったことがない人たちには、自分の心、子育てや夫の悩みをさらけ出すことができた。そこで、立場や考え方が違えば、正解は変わってくるし、必ずしも答えは一つではないということを教えてもらった。そして、子どもの良いところを見つける訓練、それは、自分の良い所、夫の良い所を探す訓練でもあった。ダメな母親だと思っていた自分にも、よいところはたくさんあるということ、そして子育てに非協力的な夫も、私からみたら、ダメな夫・ダメな父親だけど、違う角度からみたら夫はそうすることしかできないんだということが、少しずつ腑に落ちてきて、夫を受け止めることができるようになっていった。夫の育った家庭環境を考えると、子どもとどう接したらよいのか、わからなかったのだろうということを気づかせてもらい、夫婦関係は修行であるということを教えてもらい、離婚することなく、今に至っている。そのコミュニティで出会った仲間とは、実際に会い一緒に遊んだり、旅行をしたりしている。兄弟のいない娘にとっては、異年齢の子ども同士の関係も、とてもよい経験となった。仲間には、自分は自分でよいのだ、よい悪いではなくわたしの子育ていろんな母親がいるのだということを気づかせてもらい、自分はダメな母親ではないと思えるようになっていった。すぐに怒ってしまう自分も、イライラしてしまう自分も、それが自分だということを、自分自身で認めることができるようになったことで、ずいぶん怒らなくなったし、イライラしなくなっていった。そして、親だからといって正しいわけではないということ。怒ってしまった時、自分が悪ければ子どもに謝り、八つ当たりすれば、お母さんはイライラしていて八つ当たりしてしまってごめん!と正直に気持ちを話すことにした。人間だから、必ずしも正しいわけではない、間違えることもある。それを、きちんと謝るということが大切だと私は思ったので、そうしている。

  『エドワルドーせかいでいちばんおぞましいおとこのこ』(ジョン・バーニンガム/作、千葉茂樹/訳、ほるぷ出版)は、私にとって大切な絵本だ。自分はダメな母親だと自分にレッテルを張っていた私は、仲間のおかげでそのレッテルを取ることができた。言葉かけによって、絵本のエドワルドのように、どのようにも変わることができる。日々使う言葉、自分や子ども、周りの人に向ける言葉を、大切にしようと思わせてくれるこの絵本を、時々ひっぱり出して読むことにしている。
(なかた・ともこ)

 

前へ | 次へ
えほん育児日記