〜むのたけじさんを偲ぶ〜


ジャーナリスト・むのたけじの魂を継承する


                   森 ゆり子(NPO法人「絵本で子育て」センター理事長)

シンポジウム 「ジャーナリスト・むのたけじの魂を継承する〜むのたけじさんを偲ぶ〜」会が2016年9月24日(土)、夕方小雨の降るなか早稲田大学大隈記念講堂 大講堂で開催されました。会は、早稲田大学理事・政治経済学術院教授 佐藤正志氏の挨拶から始まりました。

 第1部はパネルディスカッション「むのたけじのジャーナリスト魂をどう引き継ぐか」(パネリストは鎌田慧氏・桂敬一氏・佐高信氏・宮城修氏・落合恵子氏)と追悼映像「むのたけじの軌跡」(VTR)でした。鎌田慧氏や佐高信氏をはじめパネリストの皆さんの表現は異なるものの、むのたけじ像は一つ。責任感、主体は自分(我々でなく)。足元から日本を、世界を見る。だから、言葉が立っている寝ていない。全重量をかけて自分の視点で書く、そのことに責任をもつ。――こうした生き方の姿勢は私たちを自省に導くもの以外何物でもありませんでした。

 第2部は「むのさんと出会って」・「むのさんの魂を継承する」と題して、むのたけじ先生と親しい方々が思い出を語られました。

 登壇された皆さんから、各々の心に残っているむのたけじ先生の言葉が次々に紹介されました。《美しいといえる生き方があるとすれば、それは自分を鮮明にした生き方である。》《自画自賛――結構じゃないか。自賛できないような画はかくな。》《やり始めたらあきらめるな、あきらめることをあきらめろ……》《過去を解決しなければ過去は何度も我々をためすよ……》など。むのたけじ先生が皆さんの身体と声を借りて大講堂いっぱいの参偲ぶ会風景加者に向けて大音声で語りかけているように思えてきました。

  最後にご次男の武野大策先生が遺族を代表してご挨拶されました。「自分はこれまで命について書いたり話したりしていたが、自分がこのような状態になってまだまだ考えが足りないことに気づいた。命については改めて考えていきたい」とむの先生がおっしゃっておられたことをお話くださいました。また、父の生前の希望である「葬儀をやるくらいなら自分の書いたものを読んでほしい」という言葉には一理ある。むのたけじをこの世から葬ってほしくない、むのたけじという人間の魂を引き継いでほしいということなのだ、と大策先生は思うようになったそうです。

  「これからは、力になってやれないよ」、大策先生に残された言葉と、そのことを紹介される大策先生の姿が心に深く残りました。
(もり・ゆりこ)

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