えほん育児日記

わたしの子育て   

~絵本フォーラム第102号(2015年09.10)より~  第2回

わがや2

 娘の一日を見ていると、今の小学1年生は忙しいなと感じずにはいられません。学校から帰ってくると15時です。宿題を急いで済ませると、おやつもそこそこに、友だちと夕方まで遊び回り、慌ただしく一日が過ぎていきます。そんな毎日ですので、図書館へ行く回数はめっきり減ってしまいました。

 ベビーカーや自転車に、娘とたくさんの絵本を乗せて何度も往復した図書館。でも、もう小学生になったのだからお母さんと図書館へ行くよりも友だちと遊ぶ方がいいよね。仕方ないのかな……。いやいや、図書館に通った日々をまだ思い出にはしたくはないと考えを巡らせる日々です。

 もともとは、私の「絵本講師・養成講座」の受講中に、自分の勉強のためにいろいろな絵本を見てみたいと思い、娘を連れて行ったのがきっかけでした。

 娘は、初めての図書館で、自分のような小さい子は、どうもあそこからアンパンマンの絵本を出してきてるぞ……と観察したようです。そして娘も同じように私のところへ持ってくるようになりました。ひたすら読み聞かせて、あっという間にお昼です。私は、娘が次の絵本を本棚へ取りに行くすきに、自分の目当ての絵本を確保するのが精いっぱいでした。

  図書館通いを重ねるうちに、アンパンマン一辺倒だった娘も様々な絵本を手に取るようになりました。そんな中、娘が手にした絵本に『ロッタちゃんとじてんしゃ』(リンドグレーン/さく、ヴィークランド/え、やまむろしずか/やく、偕成社)がありました。長いお話なので声もかれてきて、「借りて帰って、続きは家で読もう。お母さん、声が出なくなってきたわ」、と私が言っても、娘に「イヤ」と即答され、意地で読み切りました。娘は、読み進めるうちに自分と同じ赤い自転車に乗るロッタちゃんを自分と重ねたようです。私のほうも絶対に折れないロッタちゃんから娘の思いを教わるような気がして、二人のお気に入りの1冊になりました。今では、親子でリンドグレーンのファンになり、長い物語も少しずつ読んでいます。

 毎回、私も娘も借りたい本がいっぱいで、二人のカードで20冊を借りて帰ります。これが書店であったら、娘が選んだ絵本を吟味しないで20冊も買ってはやれません。図書館で借りるのだから、「この絵本にするんだね」と笑顔で受け入れてあげることができます。

 ただし図書館には、期日を守って返却する、本は大切に扱う等、一定のルールがあります。一度まほちゃん2私の不注意もあって、娘が絵本を傷めてしまったことがありました。司書さんから「今回は修理できますが、弁償してもらうこともあります。気をつけてください」と当然ながら、厳しいお言葉を頂きました。謝る私の姿を、娘はじっと見ていました。幼い子を連れていると、どうしても公共のルールが守れず迷惑をかけてしまうことがあります。その場で子どもを叱れば親の面目が立ち、子どもにルールを教えた気になりがちですが。私は、普段からさりげなく伝えたり、公共の場にふさわしい振る舞いを親の私たちが見せることで、子どもに学んでいってほしいと思うのです。例えば、家族での行楽の帰り、電車に乗れば、子どもでなくとも誰でも座りたい心持ちになります。でも、他に座席を必要としている方がいないか周りに目配りができる、そんな親になれたらいいなと思います。失敗することもうまく伝わらないこともありますが、公共の場に身を置くからこそ親も子も学ぶことはたくさんあるのではないでしょうか。

 先日、娘が学校へ行っているうちに、ひとりで図書館に行きました。自分の好きな本を堪能するつもりでしたが、気がつくと娘の好きそうな絵本はないかと探している私がいました。でも、娘はきっと自分で選びたいだろうと思い直して、気がつきました。「そうだ。休日に家族で図書館に行こう」、そう決めて、図書館を後にしました。まだまだ、図書館を思い出にはさせたくないと思います。
(くりもと・ゆうか)

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