私の絵本体験記

「絵本フォーラム」102号(2015年09.10)より

絵本で広がる新たな世界

田中 祥さん(東京都足立区)

田中 祥さん体験記"

 私たち親子にとって初めての本は、産後、母が病院に持ってきてくれた『いい おかお』(松谷みよ子/文、瀬川康男/画、童心社)。生まれたばかりの娘に読みながら、穏やかな気持ちになったのを覚えている。1歳の頃、図書館の近くに引っ越し、毎日通うようになった。ある日、図書館で『おつきさまこんばんは』(林明子/作、福音館書店)を読んでいたら突然娘が泣きだした。どうやら夜空に、雲に隠されたおつきさまが悲しそうな顔をしているのを見て娘も悲しくなってしまった様子。突然泣き出した娘に驚いたと同時に、この小さな本の中に私には想像できない力が詰まっているんだと絵本の力を感じた。

  娘のお気に入りは日々変わっていく。「かば、おばけ、ハリセンボン、はたらくくるま……」絵本の世界は、どこまでも広い。絵本の中には知らない世界がたくさんあって、私たちに夢を与え、新しい世界へ連れて行ってくれる。

  5月から娘は保育園へ、私は働き始めた。夜、布団の中でぎゅーっとしながらの絵本タイムは、一日のいろんな思いを鎮める時間。申し訳ないことに、最近は私が先に寝落ちしてしまい娘に怒られることも多いが、そんな日はパパがピンチヒッター。絵本タイムもいつか思い出として親子で笑って話せたら嬉しいな。娘が生まれて2年半。「絵本は我が家にはかかせないものになった」と最近夫が言う。絵本とともに過ごせる毎日に感謝しつつ、絵本で子育てをいつまでも楽しんでいきたいと思う。

(たなか・さち )

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