私の絵本体験記

「絵本フォーラム」101号(2015年07.10)より

大好きな息子との時間

坂本 律子さん(福岡県京都郡)

坂本律子さん体験記"

 私は息子のことが大好きです。息子が生まれ、はじめて対面したとき眠っている息子に何か歌を歌ってあげたいと思いました。「七つの子」を思い出して、歌いました。「かわいかわいとカラスはなくの」「かわいかわいとなくんだよ」「まるい目をしたいい子だよ」ここまで歌って、まるい目をしたいい子が隣でねむっているのを見ていると感極まって、たくさんの涙を流しました。 カラスの歌でこんなに泣くとは思いませんでした。この歌は、歌詞の途中に小さな子の質問と、答える母が出てくるところが素敵です。この子どもは、母親にかわいいといわれ、抱きしめられ、受けとめられた記憶があるからこんな質問をしたのではないでしょうか。そしてその質問をまた受けとめてあげている母親。理想の親子の時間だなと思います。

 そんな触れ合いに、そっくりな時間となりうるのは、絵本を読む時間だと思います。近頃読んだ絵本に『しごとをとりかえただんなさん』(童話館)があります。だんなさんとおくさんの挿し絵を追って、子どもと二人でお腹を抱えて笑いころげました。 その日の子どもの笑い声と表情がありありと蘇ることが、絵本から私への最高の贈り物です。

  息子は今9才になります。あともう一度、9年が過ぎれば、進学や就職でもう同じ家にはいないのかもしれません。生きる力となる憧れや感動をくっきりと親子の心に残す、絵本の時間に感謝しています。私はまだまだ未熟な母親ですが、「子どもの世界で一番好きな音はお母さんの声」という言葉を思い出すと、みなぎるような自信がいつもどこかから沸いてきます。

(さかもと・りつこ)

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