ほるぷフォーラム絵本出前講座

− ADHD この創造性豊かな子どもたち −

 ほるぷフォーラムは9月26日、山形短期大学付属幼稚園の職員勉強会のなかで
「絵本出前講座」を開催。同講座では、山形県ADHD親の会『トットちゃん』の
代表・富永豊子さんが「ADHD・親の気持と願い」と題して講演しました。
幼稚園の教職員の皆さん20余名が熱心に話に耳を傾けていました。
(構成・村尾啓子)


ADHDの話を真剣に聞かれる先生方

最初に、ADHDとは何か、どんな
症状のことですか?

富永  ADHDとは日本名で「注意欠陥/多動性障害」と呼ばれています。この子たちの知能は正常または普通の子より高い子もいると言われています。特徴として集中力に乏しく注意散漫で飽きっぽく1つのことが長続きできない。また、整理整頓が苦手ですし、忘れ物も多く、物もよくなくす。それに自己中心的で協調性に欠け、集団の規律や約束事を守ることができにくい子が多いです。
 しかし、既成の概念に縛られず、自由で斬新な発想をするために、非常に創造的です。興味を持ったことに対しては異常ともいえるほどの集中力で打ち込み、新しい概念の発見をしたり、すばらしい音楽や芸術を創りあげていく人が多いとも言われています。

山形県ADHD親の会をどんな思いで
立ち上げられたのですか?

富永 うちの子どもは今、小学五年生です。小学生になった頃から些細なことで泣き、整理整頓ができず、物もよくなくしてきました。塾の帰りに鞄を忘れてきて一週間後に連絡を頂き気づいたということもありました。私も「どうしてそんなになくすの?」と言っては怒り「どうして約束を守れないの?」と言ってまた怒り、毎日が不安の連続でした。
 小学四年生の時、担任の先生に相談したところ、スクールカウンセリングを受けてみたらと言われ、間もなくその機会をもてました。その時は国立療養所山形病院の先生がカウンセリングをしてくださったのですが、先生によく泣くことなどを話したところ「ADHDではないか」と言われました。でもその時は私自身もADHDのことを知らなかったので、聞き流してしまいました。それから後に新聞でADHDの特集記事を読み、当てはまる点が多いということに主人と気づき、本を購入して読んでみました。診察を受けた結果は、ADHDとLD(学習障害)があります、と言われました。その時、やっとこの長いトンネルから出られるなという気持ちになることができました。そんな時、インターネットで検索したら仙台にADHD親の会があることを知りすぐに入会しました。とにかく誰かに話をしたかったし、もっとこの子たちのことを知りたかった一心でした。親の会に参加するようになって、また頑張ろうという勇気を貰うことができ、子どもに対してもすごく優しく接することができました。でも、親の会に参加されている方は仙台ということもあり、山形の方は少なく、もっと近くの人と話をしたい、私のように悩んでいる人が山形にもいるのではないか?と思い親の会を立ち上げようと決心しました。立ち上げたと言ってもようやく会員5人の小さな組織です。仕事ももっている方もいて、なかなか皆で集まって話をする機会も少なく、全てこれからというところです。
 その他にEメールで連絡を頂くことも多いのですが、子どもがADHDかもしれないと思っているお母さんたちは家の中にこもってしまい、外に出ることができないとか、また、自分の受け持ちの子がADHDかもしれない、その子に対する接し方がわからない…という先生方からも連絡をいただきます。皆さん、それぞれの立場で悩んで考えて頑張っていらっしゃるのがよく伝わってきます。ここで私たち親も何とか頑張ってADHDの子どもたちに社会性を身につけさせて世に送り出したい。周りの人達にもADHDのことを理解していただき、子どもたちを温かく迎えて貰える社会をつくりたいとの思いで山形県ADHD親の会『トットちゃん』を立ち上げました。

お子さんの幼児期の様子、また、ADHDの
お子さんの幼児期はどんな感じですか?

富永 幼稚園に入園する迄の成育歴に問題はなかったです。ただ、5歳の時におたふくカゼから髄膜炎に罹ったことがありました。病院の先生からはADHDは先天的とか遺伝とかが多いが、うちの子は髄膜炎が原因ではないかと言われました。親の会のお母さんたちから話を聞くと赤ちゃんの時から夜寝ない子が多いとか、夜泣きをよくするとか、また普通の赤ちゃんはじっとして寝ているが、ADHDの子はぐんぐん上に上がっていったりする。とにかく赤ちゃんの時から動くと言っていました。2〜3歳頃になると言葉が遅いとか、ハイハイしないでいきなり歩く子も多いと聞いています。
村尾 富永さんが自分の子どもがちょっと他の子と違うなと思われたのはいつ頃からですか?
富永 小学校に入学する迄はよく泣く子ではあるが、他の子と違うなと思ったことはなかったです。5歳の時に髄膜炎に罹ったことがきっかけで、体力的なこともあり保育園から幼稚園に転園しました。今迄とは違った環境にとまどい順応できないと思っていました。泣くことも年齢が上がっていけば徐々になおるだろうと思っていました。4人兄弟の末っ子なので、子どもは成長すれば多少なりとも落ち着いていくだろう…と。それが早いか遅いかくらいだろうと思って気にしていませんでした。でも、小学校に入り毎日のように鉛筆とか消しゴムをなくしてくるし、よく泣くし、何かちょっと違うなと思い始めました。

具体的にされている治療とか、効果が
あるとされていることは?

富永 ADHDは脳の中に情報を伝達する神経伝達物質ドーパミンの働きが悪いとされているので、リタリンという薬を服用しています。あとはソーシャルスキルトレーニングと言って社会性を身につけるための訓練もやっています。この子たちは自己表現が乏しいので、少人数の中で先生やボランティアの方についていただき、ロールプレイングのようなことをします。日常起こりうる体験を疑似体験することができ、うまく対処するコツを繰り返し訓練することにより身につけることができるようになるんです。このソーシャルスキルトレーニングを病院の中だけでなく、教室の中でもできればいいと思います。
 また、この前の研究発表の時に教えていただいたのは絵本の読み聞かせが効果的だということでした。ADHDの子に絵本の読み聞かせを続けたところ、多動の子が着席できたり、じっと聞くことができるようになったとのことでした。また、以前仙台の親の会で『クシュラの奇跡』(ドロシー・バトラー著・のら書店)という本を紹介してもらいました。先生方も既に読まれた方もいらっしゃると思いますがクシュラという女の子は染色体異常、心臓欠陥、呼吸障害で複雑に重い障害の子として生まれました。昼も夜も眠れずむずかるクシュラに母親が読み聞かせを続けたら3歳の時には健常児とほぼ同じ迄に成長したんです。子どもにいいということは私も何でもやってみようと思い、絵本を購入しました。友達がほるぷフォーラムにいたので相談して『ほるぷこども図書館』を揃えました。そして絵本のことももっと勉強したいと思い、ほるぷフォーラムの仲間にも入りました。
 絵本の読み聞かせをはじめてまだ1ヶ月位ですが、最近良かったなということが3つ程ありました。1つ目はうちの子は口が多動で寝るときはいつもおしゃべりしないと眠れない子だったのですが、そのおしゃべりがピタッと止んだんです。本当に不思議なくらいに。2つ目は先日調べ物があり、主人と子どもと3人で図書館に行って来ました。いつもなら図書館の中を走り回ったり、パソコンのキーをたたいている子だったのですが、児童書のコーナーで本を見ていたんです。たまたま同級生の子がそこにいて、その子に「この本、家にあるよ」と話をしていました。3つ目は私自身、心が安らいできたことです。いらいらしたり怒っていても絵本を読んでいるうちに心が癒されてくるんです。毎日、3〜4冊の読み聞かせの時間はとても幸せな時間です。絵本の読み聞かせをはじめて僅か1ヶ月でこんなに効果が表れたこと、この子たちは聴覚よりも視覚に訴えることが効果的だということを実感している毎日です。
 ここ2〜3年ADHDのことを取り上げる記事とか本をよく目にします。つい最近読んだ本で小児科の先生が書かれた『テレビ・ビデオが子どもの心を破壊している』(片岡直樹著・メタモル出版)という本は衝撃的でした。テレビやビデオを見せ続けるとADHDや自閉症に似た症状になってしまうとのこと。実際にそういう子どもがどんどんどんどん増えているとのことでした。私も病院の先生に「テレビやビデオはどれ位見せていますか?」と言われて「○○位です。」とこたえました。 先生は特にADHDの子にはテレビやビデオは見せないで欲しい。見るときは時間を決めないと病気を助長することになりますと言われました。親として何とか病気を治したいと思いながらテレビやビデオを見せてしまったことは、とても恥ずかしいし、子どもにも申し訳なかったと思っています。テレビやビデオの長時間視聴が普通の子をわざわざ病気にしてしまっているのです。とても怖いことだと思います。是非、先生方からもテレビ、ビデオの弊害を親御さんに教えていってほしいと思います。
村尾 私もその本は読みました。その中にこんなことが書かれています。あるお母さんはこんな風に言いました。「この子はテレビを見るときは誰の声も耳に入らないし、少しも動かない。落ち着きも集中力もあります。」テレビの前でじっとしているのは落ち着きでも集中力でもありません。ただ受動的に絶えることなく与えられる刺激に心身をまかせきっているのです。それが証拠にテレビがついていなければ一気に落ち着きを失います。テレビ・ビデオ以外のことにはごくわずかな例外を除いて興味を持続することができないのです。あなたのお子さんは大丈夫ですか?と。怖いですね。

病気かどうか見極める時期は、
何歳くらいでしょうか?

富永 幼稚園位からだそうです。2〜3歳の多動は当たり前ですが、集団生活の中に入った時にすごく目立つんです。家の中ではわかりにくいし、私もそうだったのですが、落ち着きがないなとは思っても小学校に入ればなおるだろうと思ってしまうんです。同じ位の年齢の子が大勢いる中だとそういう子は目立ってきます。今、先生方が見て下さっている子どもたちはとても大事な年齢だと思います。
 ここで先生方にお願いがあります。毎日の保育の中で何かこの子は違うな、と思われたら親御さんに信号を送って欲しいんです。先生方にとって信号を送ることはとても勇気のいることかもしれません。
 しかし、社会性のある子どもに成長させるために、よろしくお願いいたします。

山形県AHDH親の会『トットちゃん』連絡先
e-mail yamagata-tottochan@a.biglobe.nt.jp
tel 090-7791-7044